脊椎圧迫骨折に対する腰背部のリラクセーション

 

臨床でよく脊椎圧迫骨折患者に、

”腰背部のリラクセーション”を施行している場面を見かけます。

”痛がっているからとりあえず”と考えている人も多いのではないでしょうか?

今回はその意義についてまとめます。

 

 

圧迫骨折後の腰背部痛

脊椎圧迫骨折後の脊椎後弯変形に伴い、腰背部痛を訴える症例は多く見られます。

腰背部痛の原因は様々ですが、多くの症例が

筋スパズムが原因と言われています。

※筋スパズム

筋の過緊張により、筋肉にうっ血し、発痛物質物質が溜まった状態のこと。

臨床的には、筋の起始と停止を近づけた肢位でも圧痛所見が取れる。

 なぜ筋スパズムが生じるのか?

腰部多裂筋は生理的前弯位の時に最も活動が高く、

後弯位になると最も活動が低下すると言われています。

つまり、脊椎圧迫骨折後に脊柱後弯変形を伴った症例の場合、

多裂筋の筋活動は低下し深部筋−筋膜コルセットの作用が

低下していることが考えられます。

その際に、腰椎と骨盤を安定させるために腰最長筋や腸肋筋などの

gloval muscleが代償で強く働き、腰背部のgloval muscleに大きな負担がかかります。

この状態が慢性化すると、過緊張状態となり筋スパズムを引き起こします。

 

疼痛緩和にリラクセーションは有効?

”痛みの緩和”目的にて筋スパズムを緩める

リラクセーションを行うことがありますが、

必ずしもそれが有効であるとは限りません。

例えば、上記のように、多裂筋がほとんど活動しないことにより

gloval muscleが過緊張状態が出現している場合を考えてみましょう。

椎体全面に重心がある胸郭を後方から支えているのは、

gloval muscleということになります。

この腰最長筋や腸肋筋などのgloval muscleを緩めてしまうと、

胸郭を支える筋がなくなってしまい、より症状が悪化してしまうことも考えられます。

そのため、腰背部のリラクセーションを行う場合には適切な評価が必要です。

脊椎圧迫骨折だけに限らず、”硬いから緩める”など、

安易な考えで治療を行うことはとてもリスクがあることを

知っておかなければいけませんね。

 

※参考文献

運動器疾患の「なぜ?」がわかる 臨床解剖学

編者 工藤慎太郎 医学書院